[不定期連載]フリックス・アレイ Another 〈RE〉emperor
皇帝。全てを統べる者。
彼の憧れの対象であった。
レイリア・ボット。それが彼の名だった。
「俺はエンペラーになる。絶対だ。」
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レイリアは中学1年生だった。
彼の学校で流行っていたものがある。それがフリックス・アレイである。
進化系おはじきホビーと銘打たれて頒布されたそれは、機体のカスタムに切断、接着等の工作が許容されていたことから人気が跳ね上がり、全世界に広まった。
彼の学校でもフリックス・アレイによるバトルが行われていた。
「ひっ、ひどいよぅ!こんなこと!」
「うるせえ!俺が勝ったらお前のフリックスは俺がもらうと約束しただろう!」
「で、でも…」
「文句があるならもう一度戦って俺に勝つことだな。」
フリックスはいじめの道具にもなっていた。
「おい、返してやれ。」
「へっ?」
「聞こえなかったか。返してやれと言ったんだ。」
「レイリアさん!失礼いたしやした。こんなお見苦しいところをっ」
「もういい。失せろ」
「はいぃいいいっ」
いじめっ子は、取り上げたフリックスを置いてこの場を去った。
「君、名前は?」
「えっ、同じクラスですけど知らないですか?」
「すまんが、他人に興味がないんでな。」
「僕はエレン・ワーナーです。」
「ワーナー。いい名前だ。」
「ありがとうございます…?」
「で、さっきのあいつはなんだ。」
「あいつはラング・ラッカー。僕みたいなフリッカーにバトルを仕掛けて機体を奪う奴らなんです。」
「フリッカーって何だ?新手のお菓子か?」
「知らないんですか!?」
「ああ。」
「フリッカーというのは、フリックス・アレイの競技者ということです。フリックス・アレイというのは、箱型のベースにパーツを切りはりして機体を作り、それをぶつけ合ってバトルする競技です。」
「なるほど。理解した。」
「よかったです。」
「じゃあ、俺にそのフリックス?とやらを教えてくれ。」
「え、なぜです?」
「あいつを一度粛清しないと気が済まないからな。」
レイリアの言動には怒りが込もっていた。
その日の放課後、レイリアとワーナーは屋上にテーブルを出して、フリックスの練習をした。
「じゃあ、自分の機体を作りましょう。いつまでも借り物じゃいけないですし、自分で作った機体の方が、愛着も湧きます。」
「そうさせてもらおう。」
「この後、僕の家に来てください。工具も材料も揃ってますから。」
ワーナーの提案にレイリアは心を躍らせていた。
[第1話 ENCOUNT 完]