フリックス・アレイ Another 〈RE〉Emperor 6
皇帝に憧れた男は、俊足の馬を手にした。 それは、彼の辿る命運を大きく変えた。
大成の時は、一歩ずつ迫る。
「エンペラーは常に強くあらねばならぬ。」
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尽ヶ丘。人口7万人ほどの小さな区である。しかし、『フリックス・アレイ』をシリーズとして展開する『マサイトイズ』の本社があるために、尽ヶ丘はマサイトイズのお膝元として、聖地的な認識をされている。
そして、今度彼らが参加する『尽ヶ丘フリックスカップ』もマサイトイズ主催の大規模大会だった。128人でのトーナメント制。優勝、準優勝は地区代表としてさらなる高みへ臨む。
レイリアは、いわばフリックスの"皇帝"を目指すわけだ。
「大会、出ると決めたは良いが…」
「いざ目の前にすると、何をしていいか分からなくなりますね…」
彼らは悩んでいた。
ワーナーは大会経験なし、ましてやレイリアはフリックス自体の経験もまだ浅い。
そんな彼らが、大きな壁を目の前にして、立ち尽くすことしかできないのも、想像に難くない。
「あっ、レイリアさん、言い忘れてたことがあります。」
「何だ?」
「大会のエントリーにはフリックスを2機登録する必要があるんです。」
「え、つまり、ストライカーだけじゃ出れない…ってことか?」
「そのまさかです…ごめんなさい…」
「早速機体を作るか!ちょっと待ってろ。家から色々取ってくる。」
「はい。」
レイリアは家に急ぎ帰った。
5分ほど後、彼はワーナーの家に戻ってきた。
「すまん。待たせたな。」
「いや、早くないですか?確かレイリアさんの家って尽ヶ丘の役所の方じゃ…」
「そうか?別に走ればすぐだがな。それはそうと、制作に取り掛かろう。」
「そうですね。」
レイリアは、ワーナーの家にお邪魔し、スペースを貸してもらうことにした。
「申し訳ない。俺が溶剤に弱いばかりに…」
「気にしないでください!そういうのは人それぞれありますから。」
「ありがとう。」
レイリアは、俊足の馬の次に何を創生するのか。彼の中には明確なビジョンが定まりかけていた。
「皇帝は『矛』と『盾』を有する。『矛』はストライカー、『盾』は…」
[第6話 VISION of… 完]