フリックス・アレイ Another 〈RE〉Emperor 8
【尽ヶ丘市西部 マサイトイズ本社】
「尽ヶ丘フリックスカップ開催まであと1週間。待ちきれん!」
マサイトイズ。競技玩具を愛する男、ユージンによって設立された新興玩具メーカーである。そんな企業としては異例の大ヒットを叩き出したのが『フリックス・アレイ』だった。
「地元密着型の大会だ。これまで、世界のすごいやつは見てきたが、まだまだ未知数の原石が隠れているかもしれん。」
1人、社長室でユージンは期待を高まらせていた。
「ワーナー、今日も練習に付き合ってくれないか?」
「もちろんです!」
そんなことはつゆ知らず、レイリアとワーナーの2人は、放課後の学校で約束を交わした。
帰宅して1時間ほどあと、彼らは尽ヶ丘遊園で集合した。
「ストライカー、フォートレス、今日も練習だ!」
「レイリアさん、見てください!」
「なんだ?」
彼の手の中にあったのは、一つのフリックスだった。
「ちょっと、見てもいいか?」
「はい!」
レイリアが見たのは、丁寧に作り上げられたプラスチック製のフリックスだった。
「『ENF-000 スクラッチャー・ステンド』です。」
「ほう。なかなか凄いな…ん、これ、全部プラ板製だとしても軽くないか?」
「そうなんです!プラ板の中に、プラ棒で骨組みを作ってあって、中は空洞なんです。そのおかげで、強度も確保しつつ、軽量な機体が作れるんですよ!」
「フリックスにはこんな造法もあるのか…」
フロントは、両サイドから伸びる直角三角形の鋭角部によって刺突力を上げている。サイドは、三角形の羽によりマインヒットのしやすさも確保、シュートポイントは、スポンジで高摩擦仕様にしてある。
「今日は、この子のテストに付き合ってもらいます。いいですね、レイリアさん!」
「これを拒否する理由などない!行くぞっ!」
その時、レイリアの目には、フォートレスが輝いて見えた。
「俺はエンペリアル・フォートレスで行く!」
「よ〜し!頑張ろう!ステンド。」
ワーナーが駆るスクラッチャー・ステンドの実力は、レイリアにとってまだ未知数であった。
[第8話 STAND up 完]