フリックス・アレイ Another 〈RE〉Emperor 4
レイリア、ラング、両者の機体はほぼ同時にフィールド上に打ち出された。
「レイリアさんの方が距離が長い。先行はレイリアさんです。」
「早速行かせてもらう。」
彼はストライカーをアグリィナックルに向けシュートする。ストライカーは勢いよくナックルのフロントに衝突した。これによりナックルが少し後退、ストライカーとナックルの間に少しの間合いができる。
「ビートヒット。ラングさん、残りHP14です。」
『フリックス・アレイ』において、主に用いられるバトル方式として『上級アクティブバトル』がある。この方式においては、相手にダメージを与える際のバリエーションがある。自機が相手に衝突し、その衝撃で自機と相手が離れることで発生するビートヒット。相手には1ダメージが入る。
「へぇ。少しは慣れてるようだが、怒った俺は止められねぇぞ!」
ラングはストライカーに向けてナックルをシュートする。
ストライカーは大きく突き飛ばされ、後方にあったマインと衝突する。
「マインヒット。レイリアさん、残りHP12です。」
マインヒット。自機→相手→マイン、自機→マイン→相手のいずれかの順番で相手に当てることで3ダメージが発生する。
「クッ、ワーナーがああ言うだけある。フリックスの腕だけは伊達じゃ無いようだ…」
レイリアのターン。しかし、彼にはどう立ち回っていいのかが分からなかった。
先ほどのラングの攻撃により、マインは後方へと大きく弾き飛ばされ、利用できない状況である。
「狙えるのは、ビートヒットぐらいか…」
レイリアは、ビートヒットを狙い、ナックルへ向けて強いシュートを放つ。
しかし、神はレイリアに微笑まなかった。
ストライカーは、ナックルの横を素通りし、フィールド外に落下した。
「自滅。レイリアさん、残りHP10」
「グゥっ、やってしまった…」
レイリアの駆るエンペリアル・ストライカーは装着されたタイヤのおかげで機動力と走破性を確保している。しかし、それは制御が難しいことの裏返しであった。
その後も、レイリアはなかなかラングにダメージに与えられず、じわじわとHPを削られていく。
「レイリアさん、残りHP、1…」
審判のワーナーの声が震える。
「ガハハっ!俺のHPは6。勝ったな!」
「(くっ、どうする…ラングを倒すためにはフリップアウトしかない。だが、俺にできるか…?)」
自機に相手をぶつけ、場外へ落とす事をフリップアウトという。これにより、相手が完全に落下すれば、6ダメージを与え、ラングを打ち倒すことができる。しかし、今まで自滅を重ねてしまったレイリアには、それができる自信がなかった。
自身の中で苦悶するレイリアの脳内に、謎の声が響く。
「皇帝の化身たる男、レイリアよ。」
「誰だ、お前は?」
「我は、皇帝の馬たる存在。」
「お前は、ストライカーなのか?」
「その通りだ。我が力を手にして、何を望む。」
「そんなの決まってる。ただ一つの『勝利』だ。」
「そうか。ならば、我が力を存分に使うが良い。」
謎の声はフッと彼の中から消えた。
「わかった。この暴れ馬を制御する方法が!」
「無駄だね!今更制御できたところで俺の勝ちは確定しているんだ!」
「いいや、そうかな?」
レイリアは、ストライカーをナックルに向ける。
「またストレートシュートか。今までそれでどんだけ失敗したと思ってんだぁ?」
レイリアは中指を機体の後ろに近づける。
「見せてやる。皇帝は、暴れ馬を制することで、進化を遂げる…!」
ストライカーは一本の矢のように突き進む。そして、ナックルとの衝突の瞬間。
大きな金属音と共に、アグリィナックルは大きく放物線を描いて吹き飛ぶ。
「なっ…フリップアウト。ラ、ラングさん、残りHP…0!」
[第4話 REVOLUTION 完]